コラム

坐薬と飲み薬、どっちが効果がありますか?

皆さま、こんにちは。わたなべ小児科院長の渡辺です。

 

時々患者さんから聞かれる質問についてお答えしていきたいと思います。

 

発熱したときに利用する解熱剤は、坐薬と粉薬があります。

私は特にこだわりはないので、患者さんやそのご家族の希望に沿って処方するようにしています。

その際に、よく、「坐薬(粉薬)の方が効くから」という言葉を耳にします。

 

実際どっちが効くのでしょう?答えは、基本的には「効果はどちらも同じ」です。

 

坐薬と粉薬、どちらも効果はほとんど変わりません。効果が発現するまでの時間も、一般的には違いはないと言われています。

では、どのように使い分けするのがよいのでしょうか??

 

基本的には人それぞれの好みでよいと思います。

粉薬を飲むのが苦手なお子さんには坐薬がいいでしょう。

坐薬は肛門から挿入しますので、その感覚がどうしてもダメというお子さんもいます。ご家族がうまく入れられないと言う方もおられます。その場合は粉薬が良いと思います。

普段は粉薬を好んで使用している方でも、嘔吐がひどかったり、咳込みが強くてなかなか粉薬が飲みづらい場合には坐薬を使用したほうが良いかもしれませんし、下痢がひどいときなどは、粉薬が苦手なお子さんでも頑張って内服を使用したほうがいい場合もあるかと思います。

また、(基本的にはお勧めはしませんが)夜間入眠中に発熱している場合、眠れているのであれば解熱剤を使用する必要はないと思いますが、どうしても使用したいと言う場合は、坐薬であれば本人を起こさなくても使用することができるというメリットが坐薬にはあります。

 

このように、使用する剤型はケースバイケース、状況によっても異なってくるかと思います。

 

他にも、使用する量によっても選択肢は変わってきます。

坐薬は、規格が決まっています。アセトアミノフェンの坐薬ですと、「50mg」、「100mg」、「200mg」の3につになります。

  

写真は当院で採用しているアンヒバ坐剤になります。

一般的にアセトアミノフェンは体重1 kgあたり10 mg使用しますので、5 kgでアンヒバ 50mg 1個、10 kgでアンヒバ 100mg 1個、20 kgでアンヒバ 200mg 1個という風になります。

体重7 kgの場合は、ちょっと少なくなりますが、50 mgを1個使用するか、100 mgを2/3個に削って使用していただくことになります。

体重13 kgの場合も、同じようにちょっと少な目の 100 mg 1個か、200 mg 2/3個か選択することになります。

アセトアミノフェンの用量については、1回体重辺り10-15 mg使用できますが、13 kgの場合、うっかり200 mgの坐薬を1個使ってしまうと少し量が多すぎると言うことになります。

つまり、坐薬は規格が決まっているので、細かい調整が効きづらいという弱点があります。

 

粉薬については、内服が苦手なお子さんにとっては、薬自体が苦痛になってしまう可能性があります。

もともと解熱剤は解熱させることが目的ではなく、患者さんの苦痛を除去する目的で使用するものです。苦痛を除去するために行う薬を飲むことが、発熱にともなう諸症状よりも苦痛であると考えられるような患者さんの場合は、使用しないと言う選択肢も視野に入ってきますし、そのような患者さんの場合は坐薬の方が本人の負担が軽くなる可能性もあると思います。

一方で、粉薬は細やかな用量の設定が可能です。体重に合わせた用量設定が可能であるため、ご家族は袋を開けて飲ませるだけという意味では簡単です。大きいお子さんで錠剤がのめないと言う場合、坐薬だと複数個使用する必要があることがありますが、内服であれば1袋で済みます。便利です。

 

最後に、坐薬と粉薬の飲ませる間隔はどうしたらよいの?という質問を時々受けます。

内服薬や坐薬は成分も全く同じものになりますので、どちらか一方を使用したら、そのあと続けて使う場合は内服薬でも坐薬でも基本的に6時間以上空ける必要があります(最近の効能書きを読むと、4時間空ければ使用可となっていますが、基本的に当院では6時間程度は空けるように指導しています)。

内服を使用したあと、すぐに坐薬を使用することはできません。逆に坐薬を使用した直後に内服を使用することもできません。

ただし、内服後30分以内に嘔吐したり、坐薬を肛門に挿入したあと30分以内に排便したりして、その後にきつそうな様子が全然改善しない場合には、薬が吸収されていないものと考えて再使用することができます。30分以内に嘔吐したり排便したりしても、本人が楽になっている様子であるならば追加で使用する必要はありません。

 

今回の結論は、、

① 坐薬と粉薬の効果は同じ

② 状況に応じて使い分けるのが良い

③ 坐薬、粉薬は基本的には全く同じ薬であり、間隔や回数については、坐薬・粉薬を合算して考える必要がある

 

ということになります。皆さまの参考になると幸いです。

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